INTERVIEWS
January 17, 2021

【Home Again】vol.4:peltsign 寺澤克己さん・彩さん「ライフパートナーと育てるオンリーワンの働きかた」前編

家具と雑貨のお店BULLPEN(以下:ブルペン)の松島大介さんが、「自分らしい住まい方」「自分らしい生き方」を営む人々を訪ねていく、連載インタビュー。

第4回は、ご夫婦で「peltsign」というユニット名でご活動されている、家具職人の寺澤克己さんと、サインペインターの寺澤彩さんを訪ねました。
それぞれの専門を活かして、看板などの什器や土台づくりから、その上にペイントするグラフィックまで、おふたりだけで完結して制作できるという、他にはないものづくりをされています。
松島さんの営むカフェPADDLERS COFFEEの看板も制作されたことがあるおふたりが、それぞれの活動を始めたきっかけについてお話しをお伺いしました。
ご夫婦でありながら仕事のパートナーでもある、尊重し合う素敵な関係を垣間見るインタビューをお届けいたします。



 
松島 - 緊張していますか?(笑)
 
緊張しています(笑)
 
松島 - 僕もですよ。ぼくも緊張しいです。
彩さんは人見知りの割には、一番最初の出会い方が印象的で、今でも覚えています(笑)
 
彩 - そうですね(笑)




松島 - ポートランドのイベントの時でしたよね。そのイベント終わりにアフターパーティーで飲んでいたら、彩さんが突然話しかけてくれたんですよね。面識が全くない状態で、紹介というわけでもなく。
以前からパドラーズコーヒーを知ってくださっていたんでしょうか。
 
彩 - はい、別のイベントのときにも松島さんがいらっしゃっていたので、そこで一方的に知っていました。



 
松島 - その当時は、peltsignとして活動し始められた直後ですよね。2015年ごろでしょうか。
どうして面識なしでもお声かけくださったんでしょう?彩さん、かなりシャイな方だと思っていたので(笑)
 
彩 - かなり緊張していたのでよく覚えていないのですが(笑)
松島さんがポートランドに住んでいたっていうのを知って、向こうのほうがサインペイントが盛んなので、なにか話聞けたらいいな、そして、お仕事も何か一緒にできたら、と思っていました。
 
松島 - すごいよく覚えているのは、僕がその場ですぐに「じゃあ何か一緒にやりましょう」って答えたんですよね。
 
彩 - それがすごい驚きでした…まさか二つ返事でやってくれるとは。お声かけして良かったって思いました。
 
松島 - 声をかけてくださったおかげで、今に繋がっていますからね。素敵なご縁があって、僕も嬉しいです。


 

 

松島 - おふたりの家具職人とサインペインターという特殊な組み合わせも含めて、おふたりだからできるものづくりのあり方や強みを、このインタビューやBULLPENを通してお伝えしていけたら良いなと思っています。
おふたりともそれぞれ全く違うスキルを持っていらっしゃいますが、それぞれの専門に進むきっかけや、お仕事についてお伺いさせてください。

松島 - 彩さんは、サインペイントを始めるきっかけとして、アメコミに憧れたり、バックグラウンドがあったんでしょうか。
 
絵を描くのはずっと好きで、そういう学校には行っていました。イラストをずっとやりたいと思っていました。
上京して、ちょこちょこやったりしていたのですが、モヤモヤした気持ちもありながら、お金を稼ぐために派遣でデータ制作やノベルティデザインなどをやっていました。でも使い捨てのものばかりデザインしていたので、楽しくないなと思っていました。
 

 

そういう時に、たまたま雑誌でサインペイントをしている人が載っているのを見つけました。看板や壁に手描きするサインペイントなら、長く残るし、汚く朽ちていくのではなく、お店に馴染んでいきながら朽ちていくのが、見た目にも雰囲気が出て良いなと気づいたんです。
カッティングシートだと、汚くなってきたな、となってしまうけど、ペイントだと時間が経つと味になって、カッコいいなとなったり、お店の雰囲気に合ってきたなと感じられる。そういう、ずっと残るものを作れる仕事があることを知って、始めてみようと思い、ワークショップに行き始めました。
 
松島 - とても素敵な考えですね。やはり、せっかく作るならば長く使われてほしいですし、街の風景として馴染んで残っていくと嬉しいですよね。
それでは最初は、趣味というか、興味本位ではじめてみたという感じでしょうか。
 
彩 - そうですね、最初はこれを仕事にしようとは、そんなに真剣には考えていなかったです。


 
松島 - 誰か参考にしている人とかいらっしゃいますか。きっかけになった作品とか。
 
やり始めてから、色んな人のインスタを見始めたりしたので、この人が好きだから始めようっていうのはあんまりなかったです。
サインペイントって、もともとはゴールドリーフを使ったりと、ハードなイメージだったんですが、割とポップなデザインのものもあったので、そういうほうが良いなとは思っています。
 
克己 カスタム系やピンスト系や、オールドイングリッシュのデザインではなくってことだよね。


 

松島 - 僕も昔のパッケージングとか、壁画とかすごく好きでした。彩さんがインスピレーションをうけるサインペインターっていますか?
 
サインペインターではないですが、ジム・ウッドリングですね。可愛いのが好きだけど、ただ可愛いだけじゃなくて、毒があったり、ちょっとシュールな感じがあったりするほうが、昔から好きです。日本の人だと、漫画家の杉浦茂とかですね。
私は、好きなものがかなり限られていて、ブレないんですよね。好きなジャンルがもう決まっていて、それ以外は興味がないんですよね。
 


 
克己 でもお仕事をする中で、いろんな幅を持っていたほうがいいんじゃないかって話したよね。
 
それで色々見たり集めてみようと思ったのですが、やはり私はそれは違うなと、再確認しました。なので、自分のスタイルを貫いています(笑)
 
松島 - 好きなものが狭く深い人と、浅く広い人、色んな人がいますから、何かに特化しているというのも、いいですよね。peltsignのペイント・スタイルはコレ!って決まっていて、頼みやすいですし、わかりやすい。
 
逆に家具や什器に関しては、相手に任せっきりですね(笑)
 
松島 - 工房にある什器は全て、寺澤さんの手作りなんですか?
 
克己 - そうですね。


 

松島 - 克己さんは、peltsignを始める前はパシフィック(PACIFIC FURNITURE SERVICE)に在籍されていましたよね。入ったきっかけは何だったんでしょう?

克己 - もともと家具の専門学校に通っていて、そこの先輩がパシフィックにいたんです。その先輩から学校に誰か働きたい人がいないか、という連絡が入って、声をかけてもらったので、働かせてもらうことにしました。
 
松島 - そうだったんですね。そもそも、なぜ家具職人を目指そうと思われたのでしょうか?

克己 - 10代前半くらいの頃に友達から家具作ってよとオーダーをもらって作っていたのですが、やはり喜んで貰えるのが嬉しいっていうのが原体験ですかね。
近所の大工さんに教わりに行ったり祖父に溶接教えてもらったり、洋裁やってる祖母に椅子張りの縫製お願いしたりしていたのですが、専門職ではないので、ちゃんと勉強してやりたいなと思ったのがきっかけですね。




松島 - 今回、tefu yoyogi ueharaのプロジェクトでは、家具というよりどちらかというと、大型什器を制作していただきました。制作の幅が広いですよね。あんまり他の家具職人がやらないようなお仕事もされていますよね。
 
克己 - 什器でもなんでも、ものを作るのは好きなので、それで誰かの役に立てるならやる、というスタンスですね。

彩 - 家具職人が好きでないことも好きで、なんでも好き嫌いなく仕事するところはありますよね。こだわるべきところ、考えないといけないところはちゃんと考えるけど、より好みをしないで仕事をするというスタンスだと思います。



松島 - 僕は克己さんの家具職人としての精度やクオリティの高さに、いつもすごいなと思っているんですが、克己さんらしいなと思いつつ気になっているのは、家具職人としての屋号がないことですね。
ほとんどの方が、独立されたら自分の屋号を作って、自分の作品を残すというか、自分を代表する作品を作っていく活動をしているなかで、克己さんは違った生き方をされていますよね。
本当に、職人として、作るものを限定しないけど、腕は確か、というのも面白いなと。

彩 - でもそれを悪く言うと、スタイルが定まっていないという風にもなるのかなと思っています。
 
松島 - 決めない、というのが克己さんのスタイルなんじゃないですかね。

彩 - 今、松島さんに言っていただいて初めて、あぁそうなのかなと思えました。
ずっとモヤモヤしていたんですよね、なかなか定まらないなあと(笑)でも、第三者に言われてみると、それはそれで良いのかもなと。
 



松島 - 逆に屋号がないから作りやすいんじゃないでしょうか。何かを作りたい人が頼む時に、この人はこれ!というのがない方が、一緒にものづくりを楽しめそうですよね。

克己 確かに、そういう仕事も結構あるかも知れません。どっかの家具屋さん、塗装屋さんのオリジナルの試作を一緒に作る、という頼まれ方もありますね。
 
松島 - そんなお仕事もあるんですね。
本当に、屋号がないのもクールだとな思っています。多くの家具作家の方が、自分の作品に自分の刻印を入れられているので、刻印とかそいういうのなしでお願いできる存在って珍しいと思うんですよね。

 



でもやっぱり、私はあったほうが良いと思うんですけどね(笑)家具の仕事は今いろいろ頂いていますが、認知されて依頼されているというよりは、知り合い伝いが多いです。
サインペイントの仕事を受けたときに、話の流れで家具の制作をしていることを話して、やっと知ってもらうことも多いんですよね。「えっ、じゃあ頼めばよかった」というふうになることもあります。

松島 - 今は、知る人ぞ知るっていう感じですもんね。今後はどのような形でやろうと考えているのでしょうか? おふたりの展示会とかをやる予定はないんですか?
 
克己 今のところ、予定は決まってないですが、やりたいと思っていますね。
 
松島 ぜひやってほしいですね、PADDLERS COFFEEで。


 

 

彩さんは、独自の好みやスタイルが明確なタイプ
克己さんは、どんなものでも作る、制作の幅が広い柔軟なものづくりをするタイプ
 
おふたりのタイプは全くの真逆ですが、そのコンビネーションが、お互いにないものを補い合いつつ、おふたりにしか作れないものを生み出しているのかもしれません。
 
おふたりのお話しをお伺いしていると、お互いがお互いをきちんと見ていて、いいところも悪いところもちゃんと理解し、程よく意見を交わしながら、最終的には尊重し合っているのだろうな、ということがじわじわと伝わる、心温まるインタビューでした。
 
自分のスタイルを認め、自分に合うやり方で、やればいい。
自分に素直に行動すればいいんだと、おふたりの言葉が背中を優しく押してくているようです。
 
後編では、それぞれのスキルを持ち合わせて一緒に活動し始めるきっかけや、ご夫婦での働き方・活動の様子・作品のお話しについてお伺いしました。





Interview : Daisuke Matsushima
Edit : Chisato Sasada
Photo : Nao Manabe


tefuは、ヴィンテージ家具のシェアリング事業や空間運営事業を通じて、「さまざまな価値を分かち合いながら、自分らしく住まえること」のサポートを行う新プロジェクトです。
本連載は、tefuのアドバイザーであり、家具と雑貨のお店BULLPENの共同代表である、松島大介さんがインタビュアーとなり、「自分らしい住まい方」「自分らしい生き方」を実践する人々を訪ねていく、BULLPEN×tefuのコラボレーション企画です。
「良いものを長く使い続けること、その価値を分かち合うこと」について考え、これからの豊かな暮らしのヒントをお届けします。