INTERVIEWS
October 26, 2020

【Home Again】vol.3:LIFE 相場正一郎さん「自分の直感に素直に生きる」前編

家具と雑貨のお店BULLPEN(以下:ブルペン)の松島大介さんが、「自分らしい住まい方」「自分らしい生き方」を営む人々を訪ねていく、連載インタビュー。

第3回は、代々木八幡にあるイタリアンレストラン『LIFE』、そして参宮橋の『LIFE son』のオーナーシェフ・相場正一郎さんを訪ねました。
『LIFE』と『LIFE son』を含めて、全国に4店舗ものレストランを展開する相場さんは、ご自宅は東京にありながらも、第二の拠点として那須高原に「山の家」を持ち、週末や休暇にはそこで家族との時間を過ごしていらっしゃいます。

相場さんのお店も、ご自宅も、山の家も、素敵なインテリアに囲まれ、とても居心地のいい空間として、これまでにも様々な記事で紹介されています。
今回は、相場さんの「山の家」に、新しい家具が仲間入りしたとのことで、お邪魔させていただきました。

実は、インタビュアーの松島さんが最初にコーヒー屋を始めたのが、相場さんのレストラン『LIFE son』でした。
そんなご関係にあるお二人に、今回改めてじっくりとお話ししていただき、相場さんの家具やインテリアなどのモノの選び方や、仕事とプライベートに対する考え方、生き方を伺いました。
多くの人が憧れる相場さんの暮らしぶりの中から、より日々を、住まいを豊かにするためのヒントをお伝えしていきます。




松島 ― 僕と加藤がコーヒー屋としての活動を最初に始めたのが、LIFE sonでのコーヒースタンドでした。相場さんに受け入れていただいたおかげで、今があると思っています。改めて聞きたいのですが、当時なんで受け入れようと思ってくださったのでしょうか。

相場 ― 紹介だよね。こういうやつがいるからどう?って言われて、LIFE son のメンバーに相談して、良いんじゃないですか、ってなった。まっちゃんたちが入ったから、LIFE sonはコーヒーに関連のあるお店、という風になっているけど、実は当時僕はドリップすら飲まなかったんだよね。

松島 ― コーヒー屋がいい、という感じでもなかったですもんね。

相場 ― マシン入れるとなったら大変だなと思っていたんだけど、ドリップでやるって聞いたから、そしたら場所貸すだけだし、そして断る意味もないし、という感じだったね(笑)
正直まっちゃんたちのやってることが流行っているものだと、当時はわかってなかったんだよね。でも実際にまっちゃんたちを受け入れて、コーヒースタンドを始めてみたら、色んな人から連絡が来た。話聞かせてくださいって、僕のところに連絡がきたんだよね。お店自体はLIFE sonにあったからね。




松島 ― あのハンドドリップしていた頃から、もう7年たったのですね。感慨深いですね(笑)
LIFE sonは、LIFEのあとの2号店ですが、どのタイミングからお店をもう一軒作ろうと思ったのでしょうか?

相場 ― やってくれる人がいたからだね。結局お店なんて人がいなきゃできないから。その人が、お店の立ち上げを経験したいと言っていて、もしLIFEで新しいのを考えているときは、ぜひやらせてください、とずっと言われていたんだ。
ちょうど物件が出てきたけど、ちょっと大きすぎるなと思っていたときに、(LIFE sonのなかのパン屋TARUI BAKERYの)樽井さんがそろそろ独立しようと考えてる、という話をたまたま聞いたんだよね。




松島 ― LIFE sonは、レストランの中にベーカリーとコーヒースタンドが同居するという形でやっていますが、今考えると、他業種の人たちが一緒に店をやるって、当時新しかったんじゃないでしょうか。
ドリンクだけ作る人と、パンだけ作る人と、料理だけ作る人がいる、という風に、違う専門の人たちが店をシェアするってなかったですよね。

相場 ― タイミングが良かったんだよね。

松島 ― すごい理にかなっていたと思います。場所が大きかったというのもあると思いますけど。
そういった、パンはパン屋が焼き、料理人は料理を作りつつ、場所をシェアすることで起こる、その掛け算の考え方が当時の僕にとってはすごく新鮮だったんですよね。餅は餅屋なのに、あれこれ全部やろうとしちゃうことが当たり前だとおもっていたから。




松島 ― 僕はLIFEを先に知っていたんですが、LIFE sonを見たときに、ぜんぜん違うなと思ったんですよね。
LIFEは、相場さんの手作りのデザインという雰囲気ですが、LIFE sonはデザインチームと一緒にやった空間としての違った雰囲気を感じます。
LIFE sonになってから、インテリアに力を入れてみることや、LIFEの時からやり方を変えてみた理由というのはあるのでしょうか?

相場 ― 単純に言うと、LIFEのときは資金も知識もなく、デザイン会社や内装会社さんそれぞれの個性があることすら知らなかったし、意識もしていなかったから、頼み方が分からなかったんだよね。

松島 ― そうだったんですね。

相場 ― インテリアデザインの会社の方と知り合って、いろいろ行き始めたことがきっかけで、それぞれのデザイン会社の個性というものを知って、見はじめたんだよね。




松島 ― 今でこそ色んな家具屋さんと付き合いがあると思いますけど、相場さんが気持ちいいと思うモノ選びの共通点があると思うんです。
初めてLIFE sonに入らせてもらってから、感じているんですけど、相場さんがものを買うことに対してのフィロソフィーがありそうだなと。だから空間の雰囲気に違和感がないと、心地いいなと、思っています。

相場 ― それは、まっちゃんもあるでしょう。




松島 ― もちろん、ぼくもフェチみたいなのがあるんですけど、相場さんもきっとあるんだろうなと思っています。モノ選びや、お金を使うときの基準といいますか、大切にしていることってなんでしょうか?

相場 ― モノ選びに関しては、そんなに探して探してってやるタイプではないんだよね。その時々の流れに任せているかな。
さっき、なんで僕をLIFE sonに受け入れてくれたんですかって聞いてくれたけど、それはただ単に、信頼している人の紹介だったから。他の人だったとしても、多分受け入れていたと思う。
だから、割と人の意見、人の言葉を信用するところはあるかもしれない。この人の言ってるものはいいんだろう、という選び方が多いかな。




松島 ― そうなんですね。

相場 ― 自分より色んな経験を持っている人の話はよく聞くし、そういう時間を作る。人に聞きに行くことが多いかな。
例えば、ぼくと他の人が、それぞれ良いと思って、結果同じものを選んでいたとしても、僕はたまたまあった10ぐらいの中から選んでいるのに対して、100個の見ている中から選りすぐって1個を決めている人もいるから、そういう人の方が経験値も高いし、信頼感があるから、そういう人に聞いてるね。

松島 ― 感覚というか、人というか。

相場 ― 自分は、ものすごく好きで家具のデザインの歴史に詳しい、というわけではない。周りに詳しい人がいれば、聞けばいいかなと思う。ゼロから全部自分で探して、ということはあんまりしないかもしれない。情報を拾っているかな。




松島 ― コロナになって家にいるようになってから、ヴィンテージのものとかを買うようになったんですよね。今まで以上に。自分がいる空間に対しての気持ちよさや、心地よさにお金を使おうと思い始めた。絵を買ってみたり、ランプを買ってみたり。そういうのはありましたか?

相場 ― コロナ禍に関しては、新しいカメラのレンズを買ったね。純正ライカのレンズ。
なんとなくつまんないというか、浮かない気分だったから、毎日の生活の中で、楽しいことをやりたいなと思って、日々の生活の中で撮れるレンズということで35mmのレンズを買った。家の中で過ごしているときに、首にさげて、私生活の様子を結構撮っているね。

松島 ― コロナもあって、テンションを上げていきたいっていうのがあったんですか?

相場 ― そうだね、テンションを上げたくて、純正ライカのレンズを買ったんだ。
本当は、他のレンズでキレイに映るいいものがたくさんあるんだけど、純正という付加価値というか、モノへの思い入れ、自己満足だよね。それがいいんだよね。




松島 ― 今回、MOBLEY WORKSの鰤岡さんに家の家具をお願いするのは初めてとのことですが、その新しいチェスト、めちゃくちゃ良いなと思いました。デザインはお任せですか? 

相場 ― 入れたいものだけ伝えて、細かい仕様は全く言ってないね。短期で滞在するときのカバンをしまうところと、洋服をしまう引き出しがほしい、ということだけ。あと、棚下にゴミがたまらず、掃除をしなくていいように、棚は床ぴったりにしてもらっています。それ以外は、鰤岡さんの好きなように、任せて、作ってもらったね。




松島 ― 両端のジャバラの機構をやりたいって言っていたのを鰤岡さんから前に聞いてました。

相場 ― これ置いただけで、かなり部屋の雰囲気が変わったよね。家具一つで、雰囲気ができあがった。さすが鰤岡さんだなと。




松島 ― 北欧だと、家具を選ぶときに、基本的に次世代に残すものという考えだから、良いものや愛着の湧くものを選ぶようにするって聞きますし、実際に北欧ヴィンテージの家具って残っているじゃないですか。相場さんの子どもたちも、今良いものに囲まれていて、すごく良い環境で育っているなと思うんですよね。

相場 ― 良いものって、でも結局おとなになってから気づくだろうね。

松島 ― 子どもにも早くにイイものにふれててほしいとか、子どものためにという考えはあるのでしょうか?




相場 ― 子どものためにという意識は、今はそこまではないかな。子どもが大人になってから、良い家具だからもらっていいか、と聞かれたらもちろんあげるけどね。大人になったら気づくだろうし、確かにうちみたいな環境で育ったら、永く使えるものを買うようになるんだろうね。
うちの実家もそうだったから。最初家を引っ越したとき、全部実家から持ってきたりしてたんだけど、それが意外と結果高くついたりするんだよね。実は良い家具だったって、わかんないから。引き継いで張り替えたら、それだけでも結構かかったりして、新しく買うほうが安かったりする。でも、小さい頃から使っていた思い入れが、なんとなくあるから、頑張って張り替えて使ってたりしたかな。

松島 ― あえて、そういうことをするんですね。

相場 ― ここにあるソファも、革を張り替え修理してもらって、今もボロボロになっても使っている。結構そういうことが好きかもしれない。そこまでして繰り返し直したりしていたら、またちょっと愛着も生まれるだろうし、もっと好きになるだろうなと思う。
やっぱり好きなものに対して愛着が湧くのは、時間がかかるものだよね。




自分がいいな、と思うものを素直に選んで、
時には風の流れに身を任せて、信頼する人に任せて、
少し遠回りで、お金がかかることだったとしても、
結果的に良い方向に進んでいったり、愛着や思い入れが生まれて、自分が一番良いと思う暮らしに近づく。

ひとつひとつの小さなストーリーから、相場さんらしいモノ選びや豊かな住まい方を知ることができました。

後編では、二拠点生活や家族、仕事を両立させている相場さんの、自分らしい生き方を実践するために大切なことをお伺いしました。



相場 正一郎 / Shoichiro Aiba
イタリアで修行後、原宿のレストランで店長を経て独立。 2003 年に代々木八幡に自身のレストラン「LIFE」をオープンし、現在では全国に4 店舗のレストランを運営。フリーペーパーの発行やワークショップ、プロダクト制作、コンサルティングなど幅広く活動。著書に『世界でいちばん居心地のいい店のつくり方』(筑摩書房)、『LIFE のかんたんイタリアン』(マイナビ)がある。


Interview : Daisuke Matsushima
Edit : Chisato Sasada
Photo : Junpei Ishikawa


tefuは、ヴィンテージ家具のシェアリング事業や空間運営事業を通じて、「さまざまな価値を分かち合いながら、自分らしく住まえること」のサポートを行う新プロジェクトです。
本連載は、tefuのアドバイザーであり、家具と雑貨のお店BULLPENの共同代表である、松島大介さんがインタビュアーとなり、「自分らしい住まい方」「自分らしい生き方」を実践する人々を訪ねていく、BULLPEN×tefuのコラボレーション企画です。
「良いものを長く使い続けること、その価値を分かち合うこと」について考え、これからの豊かな暮らしのヒントをお届けします。